コレクション: 2026.8.31 lulu's Report of Kanchanaburi 2026 Summer

 

2026.8.31

lulu's Report of Kanchanaburi 2026 Summer


通うことで見えたタイ・カンチャナブリー産サファイアの新たな魅力

 


 

タイ西部に位置するカンチャナブリーでは、サファイアの名産地として名を馳せましたが、大規模な採掘は終了し現在ではほとんど閉山状態にあります。

 


↑鉱山エリアの跡地にある通称ビッグボスマダムの邸宅にある、採掘している人のオニキス像

 

 

さらに、カラーや内包物などの特徴により、綺麗な結晶は全体のわずか数%と言われるほど、美しい宝石を見つけることは難しい産地です。


この産地のサファイアの個性に魅せられて、これまでも度々訪れて沢山の宝石を見てきましたが、ここ2ヶ月ほど毎週欠かさずに通ったからこそ見えてきたことや、新たな発見がありました。


蓄積してきた経験と知識に今回新たに得た情報を踏まえて、改めてカンチャナブリー産サファイアについてお伝えしたいと思います。



 

✴︎多くの結晶に含まれる内包物✴︎


カンチャナブリーのサファイアは多くの内包物を含みやすく、シルクインクールジョンや皮膜状の内包物などがよく見られます。


皮膜状やフィンガープリント状の内包物は、非常に多くの結晶で見られ、入っていないものを探すことは困難なほどです。


シルクインクルージョンは、成長線などに沿って部分的に入ることが多く、角度によってシルバーやブロンズに輝くものもあります。

 


↑ブロンズ感のあるシルクが美しい非加熱サファイア0.467ct

 

カンチャナブリー産サファイアは、基本的には加熱のものが多い印象ですが、非加熱の結晶ではこのようなシルクインクルージョンがよく見られます。

 


↑グレーシルバーのシルクインクルージョンを多く含んだ非加熱サファイア0.843ct

 

これらの内包物が、宝石全体を覆うほどたっぷりと入っているものが多く、一石の中に複数の内包物が含まれるものも多くあります。


しかし、これらの内包物が産地らしい魅力のひとつにもなっており、ユニークな表情を見せてくれる宝石のチャームポイントにもなっています。





✴︎カットとプロポーションの特徴✴︎


大規模な採掘を終えているということもあり、現在見かけるサファイアの多くが1ct未満です。


1ct未満のものも、メレサイズと呼ばれる数ミリ前後のものも多く、0.3ct前後の小粒のものをよく見かけます。

 


↑超小粒のサファイア原石

 

カットは、ほぼ全ての石のパビリオンにステップカットが施されており、現地でこの産地の他のカットを見たことはまだありません。

 

↑仕入れたままのカット前の状態

 

カットそのものも、クオリティは決して高いとは言えず、ミーティングポイントやファセット面のサイズが大きくずれたものが多いです。


クラウンに厚みのないものが大半で、パビリオンはまるでバスタブのような膨らみのある形状のものが多く、その結果、中央の色が抜けて見えるものが非常に多いです。

 


↑膨らみのあるパビリオンのステップカット

 

そのため、カラーそのものは良くても色のりが悪く見えたり、輝きがあまり出ないように見えるものも多くあります。


それゆえに、結晶に合ったカットを施した時には、見違えるほど美しいカラーと眩いほどの煌めきを見せてくれます。

 


↑太陽光で凄まじく煌めくサファイア2.176ct



✴︎産地らしい豊かなカラー✴︎


↑豊かな色を含んだ非加熱サファイア 1.439ctの原石

 

カンチャナブリーのサファイアは、ブルー・イエロー・グリーン・ヴァイオレットなどが主に産出されます。


その中でもブルーが圧倒的に多く産出されていましたが、深すぎるカラーのものが多く、透明度が高く美しいブルーはごく僅かです。


特にブルーは、霧がかったようなという意味合いの"スリーピー"と表現される質感のものがほとんどで、濁ったような色合いのものも多くあります。

 


↑スリーピーさがありながら綺麗なブルーのサファイア 0.714ct

 

しかし、その独特の質感は、シルクインクルージョンなどとはまた微妙に異なる、なんとも言えない絶妙な艶感や色の深みを生み出しています。


ブルーの色合いはグリーンやパープルを含んだものが多く、ニュアンス感のあるブルーにスリーピーな質感がカンチャナブリーらしい代表的なカラーで、透明度の高い結晶では深みのあるブルーが一際美しいです。

 


↑部分的にグリーンを含んだロイヤルブルーが美しいサファイア1.213ct

 

イエローの色合いは、明るく鮮やかなものが多くありますが、これまで見てきた中ではオレンジ寄りのカラーは少ない印象でした。


今回、集中的に現地へ通った中での大きな発見の一つは、オレンジ色のサファイアも産出されていたということです。

 


↑通称小声マダムに見せてもらったオレンジ・イエロー系の30年前のオールドストックロット

 

これまでは見たことのなかった、まるでスペサタイトガーネットのマンダリンカラーのような、非常に鮮やかで明るいオレンジのサファイアとも出会うことができました。

 


↑非常に色のりの良いオレンジサファイア0.694ct

 

グリーンの多くは、これまでは明るいトーンのものしか見かけませんでしたが、今回はティールカラーのような深いグリーンもいくつか見ることができました。

 


↑ディープティールカラーが美しいサファイア2.083ct

 

産出量は少ないものの、今回もヴァイオレットといくつか出会い、深いヴァイオレットから柔らかくピンクに近いようなパープルまで、様々な色合いのものがありました。

 

↑ヴァイオレットの効いたサファイア0.366ct

 

ピンクを一部に含んだ結晶は見たことがありましたが、今回は色幅豊かなピンクの結晶もいくつか見ることができました。

 

↑ピンクをかなり多く含んだサファイア0.692ct

 

大きさは小さいものの明るいピンク単色の結晶から、パープリッシュピンクやオレンジーピンクなど幅広い色合いがあることが分かりました。

 


↑オレンジ系パパラチァのような雰囲気のある非加熱ライトオレンジサファイア0.700ct

 

また、はっきりとピンク単色で発色していなくとも、他のカラーに含まれることで、色に奥行きと深みを生み出していることも分かりました。


ニアカラーレスの結晶や、淡いパステルカラーの結晶もあり、色合いのトーンもディープカラーからライトカラーまで実に幅広いことも分かりました。

 


↑角度によってさまざまなカラーが現れる非加熱サファイア 1.439ct

 

 

このように、カンチャナブリー産サファイアのカラーは様々な色合いがあり、これらが混ざり合うことで産地らしい複雑な色になっています。


毎週続けて通ったことで、これまでのイメージを超えるようなカラーバリエーションがあると分かったことは大きな収穫でした。





これらのカンチャナブリー産サファイアの特徴が絶妙かつバランスよく混ざり合ったとき、この産地らしい美しさと豊かな表情を見せてくれます。


しかし、カットやプロポーション、不要な内包物などにより、本来の輝きやカラーの美しさが十分引き出されていない宝石も数多くあります。


長年通ってカンチャナブリー産の魅力を知っているからこそ、その宝石の美しさが輝くようにカットすることで、産地の魅力が最大限に引き出されることを何より大切にしています。


産地の魅力に触れていただきたい、宝石の楽しさを感じていただきたい、そしてそっと寄り添う心の煌めきにもなれればとの想いを込めて、これからもご紹介できればと思っています。



 

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