コレクション: 2025.9.24 グリーンジルコンについて

おはようございます。

ノリちゃんです。


「5分で読める暇つぶしシリーズ」、今回は「グリーンジルコン」編です。



 このコンテンツでは、ジルコン全般について少し解説しようと思います。


 下の画像は、ラタナキリーブルーと呼ばれる濃い青色のジルコンや、パープルジルコン等様々な色合いを持つジルコン達です。

 

 ジルコンは和名を風信子(ヒヤシンス)石と言う、ケイ酸塩鉱物に属する鉱物です。大きさを問わなければ岩石の中に存在し、広く分布しておりますが、宝石として流通する物の産地はある程度決まっています。


 どこぞの記事て見た事がありますでしょうか。「世界最古の鉱物~」と聞く事がありますが、これはオーストラリア産であり、全てのジルコンに当てはまる訳ではありません。


 モース硬度は7.5と固めであり、比重はサファイア同等からちょっと重い程度(後述有り)

ジルコンは名前の通りジルコニウム(Zr)を含む鉱物ですが、これがハフニウム(Hf)に置き換えられたハフノンという赤い色の物もあります。

割と近い存在なので置換がある可能性がある元素ですね。

もしかしたら、持っている赤いジルコン、鉱物学上ではハフノンかもしれませんね。

 

 下の写真は次項で扱う「ダブリング効果」です。クラウン側のファセットはくっきりと映っているが、バックファセットのラインはボヤけています。コレはファセットの技術が悪い訳では無く、光学効果的な要因になります。


 ジルコンの特徴と言えば、ダイヤモンドの代用品になった歴史と共に「ダブリング効果」があります。

複屈折という要素により、パビリオン側のファセットが二重に見える現象です。

この効果によりスフェーンもそうですが、そもそもの強い輝きに加えダブリングによって、より多く輝く様に見え、大変眩い輝きを出してくれます。


 下の画像は次項「メタミクト化」の最たる例のジルコンです。

 

屈折率自体はメタミクトが進んでいても其処ら辺の鉱物よりは遥かに高いのですが、通常の加熱ジルコンを見た後では数段階輝きが弱く見えてしまいます。

ダブリングも弱くなっています。



 ジルコンは微量ならがら放射性元素を含む為、メタミクト化を起こします。

このメタミクト化というのは、簡単に言えば、内包された放射性物質自身による鉱物の損傷という物です。

これの進行具合によって、ジルコンの美しさ、硬さ、比重が左右されます。(メタミクト化で冒頭のモース硬度や比重よりも脆く軽くなる傾向)特に激しいのが緑色のジルコンです。


 ジルコン自体のジルコニウムには放射性同素体という放射性を持つジルコニウムが存在します。

しかし、こちらが作用する事で起こるものではなく、ジルコニウム鉱物が含む別の放射性物質(トリチウム、ウラン等)による作用である場合が普通です。

 このメタミクト化をある程度直す、また色自体を改善する為に行われる処理が「加熱処理」になります。

これによって、壊れた配置をある程度直す事が出来、結晶を美しくする事が出来ます。


 下の画像は、次項「加熱処理」を施されたジルコン達です。美しい輝き、色相にも差があります。加熱の入れ方等によっても色の差が出ます。



 800~1000度で青色に、それ以上の温度で無色にする事ができます。

純粋な結晶は無色ですが、基本的に加熱処理されていると言っていいでしょう。

また、全ての石が青くなる、無色になる訳では無い様で全てが美しい色合いを呈す訳でも無いです。
石自体のポテンシャルや産地にも因ります。


 この加熱処理は、コランダムに行う加熱処理、エメラルド、レッドベリルに行う含侵処理と同様で価値を損なう処理としては扱われません

特に、コランダムの加熱と違って、加熱・非加熱による価格差はほぼ無い、寧ろ綺麗な発色を出した場合は価値が高まります。


 下の画像は、次項「タイプ」に重要な肉眼判別になりますが、ハイタイプ的特性を取るブルージルコンと、ダブリングが分からないロータイプのグリーンジルコンです。


 ジルコンは、メタミクト化の進み具合でータイプ・中間・ハイタイプと概ね3段階に分かれています。

メタミクト化は、放射性元素によって長期にわたり構造がゆっくりと破壊されていく事であり、進むと鉱物学的、光学的値も変わってきます。

大きな定義(各数値の設定は有り)は無いのですが、加熱による物は結晶構造が回復してハイタイプになり、緑色が一般的に概ねロータイプと言われています。

放射性元素を含む放射性鉱物は、大体緑色、茶色、黒色を呈してる事が多いです。

主に宝石学的な検査によって、光学的に高い値を取る物がハイタイプとなる為、「検査→数値的にタイプ分け」という形になるでしょう。

とても簡単な判別...とまでは行きませんが、ルーペ等でお手元のジルコンを見てみてください。ダブリングの強さも指標の一つです。

そして、グリーンジルコンが全てロータイプという訳では無く、中間、稀にハイタイプの物も存在します。

面白い小話なのが、加熱によって色やタイプ変化を起こすので、緑色のロータイプを加熱して宝飾品質に上げてしまう事が大半である為、グリーンジルコンはレアカラーの分類になります。

上記に似た話が、ゾイサイト(タンザナイト)です。

価値の低い色である茶色等のゾイサイトを加熱する事によってタンザナイトに仕上げ、価値を上げます。なので、価値が低いのに希少カラーという矛盾が存在するのです。


 下の画像は、今回の紹介する1石の3.649ctのグリーンジルコンです。

輝き、色共に良く、中間タイプと思われます。


 今回メインでご紹介するグリーンジルコンは、非加熱になります。

非加熱、特にグリーンジルコンの場合はメタミクト化による風化具合が割と進んでおり輝きに悪い意味で影響する事が多いです。

また、個体差はあるものの、基本的に非加熱のグリーンジルコンはカット・研磨の難易度は非常に高いと聞いています。

しかし今回ご紹介する作品は輝きも強く、色味・発色が良く、カットが美しく仕上げられた珍しい物になります。

 

 今回も、ジルコンを特集しますのでぜひ手元で輝きを見てください。

こういう輝く鉱物達こそ、カットの良さで輝きが溢れ出します。

部屋の中でも日光でも、お出かけ先でさえも楽しめる事間違いなしです。